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利回りの高さで注目が集まるREIT(リート)。その中でも外国人観光客の増加により今後の成長が期待できるホテルリートの特徴やメリット・デメリット、その他主要な投資法人もリストアップして紹介しています。
ホテルリートとは投資対象をホテルに特化した単一用途特化型リートの一つです。リートとは投資家から集めた資金をもとに不動産投資を行い、そこで得られた賃料収入などを投資家に分配する金融商品です。
ホテルリートではホテルや旅館物件を購入し賃貸して得られる賃貸収入から経費を引いたものが分配金となります。賃料収入が主体で基本的には物件の短期売買などは行われませんが、もし売却により利益を得た場合にはそれも投資家への配当に充てられます。
リート(REIT)は上場しているため透明性が高く利回りが高いことが魅力です。REIT平均分配金利回りは5.06%(2025年4月16日現在)となっており、日経平均の平均配当利回り2.03%(前期基準)を上回っています。
ホテルリートの場合はその中でも4~6%の高い配当利回りになっています。当サイトで紹介した投資法人の配当利回りは以下の通りです(2025年4月16日現在)。
ジャパン・ホテル・リート投資法人が発表した第25期(2024年12月期)決算によると、投資口の追加発行により、沖縄ハーバービューホテルなど4物件のホテルを取得。変動賃料のホテル28物件のRevPER(客室当たり売上)は前期比16.5%増の16,224円で、39%の増益となっています。1口当たりの分配金は前期比30%増の3,937円となりました。
第19期(2025年1月期)決算によると、第19期はザ・ワンファイブマリン福岡を取得し、ヴァリエホテル広島とネストホテル札幌駅前を売却。変動賃料の20物件のRevPERは、前年同期比19.2%増となる9,534円。物件売却益により前期比から233%増益し、物件売却益の全額分配によって1口当たりの分配金は10,125円となっています。第20期(2025年7月期)は物件売却益の減少によって、前期比64.3%の減益、1口当たりの分配金は3,613円となる見通しです。
ポートフォリオがオフィス5割強、ホテル3割、残りが商業施設等で構成される投資法人です。第45期(2024年10月期)決算によると、橋本MTRビルの50%を売却。前期取得の物件の通期稼働やホテルの変動賃料は増加したものの、物件売却益の減少によって、前期比6.4%減益となりました。1口当たりの分配金は4.3%減の1,757円となっています。
星野リゾート・リート投資法人の第23期(2024年10月期)決算によると、労働力不足による稼働制限の影響で星野リゾート運営物件の変動賃料が伸び悩んだものの、新規物件の収益寄与によって前期比16.9%の増益を実現。期末のポートフォリオは69物件、資産規模(取得額合計)は2,266億円、有利子負債比率は38.6%となっています。
第43期(2024年12月期)決算によると、投資口の追加発行で「アートホテル大阪ベイタワー&空庭温泉」などホテル12物件を取得。国内のホテル93物件のRevPER(客室当たり売上)は前年同期比13.7%増となる12,895円となりました。期末のポートフォリオは146物件、資産規模は6,530億円、有利子負債比率は47.0%となっています。
2023年にスポンサーが大江戸温泉物語グループから、ホテル大手チェーンのアパホールディングスに交代しました。第17期(2024年11月期)は物件の取得なしで、担保権解除に伴う融資関連費用の減少によって前期比16.8%増益。1口当たり分配金(利益超過分配金含む)は1,837円となっています。期末のポートフォリオは15物件、資産規模(取得額合計)は359億円、有利子負債比率は35.6%です。
ホテルリートにはメリットもあればデメリットもあります。これから始めようという方は、メリットだけでなくリスクや注意点もしっかり理解しておくことが重要です。
日本最大級のホテル特化型リートで着実な成長と安定した収益確保が基本方針。フルサービスホテルやリゾートホテルが重点投資対象で、成長期待の高いホテルへの戦略的CAPEX(価値を高める資本的支出)を行います。
「心築」を軸とした事業モデルを展開するホテルリートです。インバウンド需要の拡大を背景として宿泊主体・特化型ホテルに重点投資。また成長性を考え、リゾートホテルやフルサービスホテルなどもしっかり押さえます。
森トラスト・ホテルズ&リゾーツの運営力によるグループの品質とその価値を共有するホテルアセットに重点投資。不動産の資産性に着目しつつ、森グループとの情報共有や意見交換など相互サポートによる成長を狙います。
星野リゾートグループが関与する物件を主な投資対象としてポートフォリオを構築。グループが持つ施設運営や専門性の高さを活用しながら収益を確保し、さらなる運営力の強化につなげる共生関係による成長を基本とします。
ホテル及び住居をコアアセットとして重点投資。首都圏と全国主要都市部だけで8割強(2020年7月時点)、残りを海外に設定したポートフォリオを構築し、スポンサー会社との情報共有で地域の市場を的確に捉えながら投資判断を行います。
投資先が温泉・温浴関連施設の特化型リート。大江戸温泉物語グループが運営する施設に集中投資を行うことで安定収益の確保を目指しつつ、投資が運営基盤を強固にするという互いに成長できる関係の維持を目指しています。
2020年2月頃から国内での流行が見られた新型コロナウィルス。ホテルリートが受けた影響の一例を紹介します。
新型コロナウイルスの影響でホテルの集客や稼働率が大幅に低下したことから、ホテル運営会社の経営が立ちいかなくなるリスクが出ています。
2020年5月11日に6月期の分配金大幅減少の見通しを示したことから、12日の東京市場でホテルリートのインヴィンシブル投資法人(8963)が急落するという事態が起こりました。その他のホテル系RIETも大きく売られる方向にあります。
INV(インヴィンシブル投資法人)の未定とされていた分配金予想は1812円から30円となり、当初の予想から比較して98%減少することとなりました。
国内で有数のホテルを所有しているINVにおいて、83物件のうち73の物件がマイステイズ・ホテル・マネジメント(東京・港)の運営になっています。INVは、固定賃料と利益に応じた変動賃料をマイステイズから受け取っていました。
マイステイズはINVの主要テナントであったため、これまで分配金の原資になっていたことから、3月から6月までの固定賃料の支払い免除および物件管理費をINVがけ持つことが発表されました。
新型コロナウイルスの影響でホテルを利用する人が大幅に減ったことから、稼働率が大減少し、業績が悪化しています。マイステイズの賃料を支払う義務や運営費用を考慮し、INVが支援することでマイステイズの倒産を防ぐという決断をしたことが背景です。
今回の新型コロナウイルスの影響でホテル側の営業が厳しくなることが予想されたとはいえ、INVの下した決断は投資家を動揺させる結果となりました。
結論からいえば、ホテルリートの先行きは見通しが明るいとは言えない状況です。一部のホテルリートでは今後の業績復活を見越した動きも見られますが、INV以外のホテルリートでも大幅な分配金の見直しが起こる可能性もあります。
ホテル系リートはその他の不動産系リートに比べて、状態の悪化から復活までの時間がかかるとされています。また、大半のホテルリートにおいて、投資の対象はビジネスホテルであることが多いです。国内観光客向けのキャンペーンはリゾート系ホテルの利用が多く見込まれていることから、ビジネスホテルへの風向きは当面良くならないことが予想されます。
コロナ禍で大打撃を受けたホテルリートですが、2022年に入った頃から宿泊需要が回復しました。2022年後半以降はホテルの賃料向上やリートの分配金増配などの話題も登場し、2023年には宿泊稼働率がコロナ禍前の水準が射程圏内に入るまでに好転しています。
星野リゾート・リート投資法人もその例に漏れず、2024年10月期の決算で営業収益は前年比12.4%増の74億9,600万円、純利益は前年比16.9%増の27億3,400万円を記録。インバウンド需要の急回復や都市型ホテル「OMO」の拡大などが寄与したことで、収益基盤の強化が進んでいます。
星野リゾートの4代目社長の星野氏は、アフターコロナ成長の環境整備として労働不足からの脱却に取り組んでいます。2023年春から業務最適化プロジェクトを進めており、現時点で必要な労働時間の新たな割り出しを行ったうえで、必要な人員を補充するというプロセスを実行。2024年春に750名の新卒社員を採用しており、最低限必要な業務知識と技能を身につけることで、夏休み前の7月中旬には労働力不足から脱却する見通しでした。
一方で、第23期(2024年10月期)決算では労働力不足による稼働制限の影響を受けており、星野リゾート運営物件の変動賃料が伸び悩む結果となっています。星野リゾートにとって、労働力不足は今後も引き続き向き合わなければいけない課題となるでしょう。