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2023年現在、国内外の旅行需要が大きくなっており、それに伴いホテル需要も伸びています。新規でホテル業界に参入する企業や個人もいる中、ホテル投資として適切なタイミングなのか解説していきます。
新たにホテルを建設する際、様々な費用が掛かります。ここではホテル建設に必要な費用について解説します。費用はホテルの規模によって変化するので、総建設費に対する各工事の割合を示します。
工事の中でも最初に行うもので、ホテルの基礎となる部分です。土工事(基礎や地下をつくるための地盤に関する工事)や、基礎や杭の設置、建物本体の躯体(鉄筋コンクリートや木造)の建設を行います。総工費に対する割合は15〜25%です。
屋根、外装、建具、内装などにかかる費用です。客室数が多いホテル程、各部屋に使用する設備の費用がかさみます。またラグジュアリーホテル・リゾートホテルなどホテルのグレードが高ければ装飾的な要素も増え、希少な材料を使用することもあります。そのため、仕上工事は総工費に対する割合も大きくなる場合が多いです。総工費に対する割合は30〜50%です。
照明、防災、給排水、空調換気、エレベーターなどの設備にかかる費用です。照明をこだわったり、静音性能が高い空調を入れる場合には設備工事費が高くなります。総工費に対する割合は25〜35%です。
敷地内の植栽や車路の舗装などにかかる費用です。敷地の広さに比例して工事費も増えます。総工費に対する割合は5~15%です。
家具、什器、特殊照明、備品などにかかる費用です。客室数や、ロビーや廊下など共用部のこだわりによって工事費も変動します。
映像、音響、ITなどにかかる費用です。ホテルグレードや種類によって変化しますが、こだわれば金額は増大します。
入退室管理、カードキーシステムなどにかかる費用です。ホテルによってどのシステムを入れるかで金額は変動します。
種類別ホテル建設にかかる建設費用について解説していきます。
ビジネスホテルとは、出張などビジネスシーンで使われることが多い宿泊のみに特化したホテルのタイプです。都市部の駅近辺など、交通や商業における利便性の高い場所に多くあり、客室面積は平均15~20㎡と比較的小規模です。宿泊特化型なので、必要以上の設備(特別な設備や装飾的な要素)は少なく、その分建設費も抑えられます。
近年は、温泉を敷設したものや家族やカップル向けのプランを提供するビジネスホテルもあり、単に『寝るだけのホテル』というイメージからの脱却も図っています。
100~150万円/坪
シティホテルとは主に都市部に立地し、ビジネス・レジャー・観光などさまざまな目的で利用されるホテルタイプです。宿泊としてだけではなく、ホテル内テナントや宴会場、ロビーラウンジ、会議室、外部利用も出来る高級レストラン、プール・スパなど共有部分が多いことも特徴として挙げられます。
レストランやテナントなどの内装は、直営でなければ各事業者の負担となりますが、そのスペースを確保する分建設費は増大します。またプールや大浴場に水槽、ろ過装置、サウナ、ジャグジーを設ける場合は、専用の工事が必要になります。
130~220万円/坪
ラグジュアリーホテルとは客室単価が他のホテルと比較して最も高く、内装のグレード感やサービスも充実した高級ホテルタイプです。最高級ホテルの名に相応しい空間を提供するため、照明や内装の細部までこだわりを持ってデザインされており、必然的に内装工事費の割合が他のホテルタイプに比べ高くなっています。また宿泊者のみが入館できるような厳重なセキュリティシステムの設置や客室の照明・空調などを快適に制御するシステムなどの設置も必要なので、設備費用の割合も高くなります。
都市部の複合ビルに入居するビルインタイプ、自社で建物から建設する場合(都市部のビルタイプやリゾート地のヴィラタイプなど)など立地や条件によっても総工費は大きく異なります。
250~350万円/坪
旅館とは、部屋が基本的に和室で構成され、温泉が設けられた日本独自の宿泊施設です。郊外の温泉地や避暑地に立地する場合が多くあります。旅館の特徴は、和風の外観、畳敷きの客室、露天風呂を備えた宿泊施設ということです。また、郊外に立地する場合が多いことから広大な敷地を有しており、建物と敷地の雰囲気を調和させるためのデザインが必要なので、外構費用の割合も大きくなってきます。
温泉地に旅館を建設する場合には、温泉から噴出する硫黄成分による錆び対策や、設備機器等に対する塩害対策が必要となります。
160~250万円/坪
ホテルを計画する際、要望やこだわりが大きくなるにつれ予算オーバーとなり着工できないというケースも多くあります。どのようなところに注意すれば費用を削減しコストを最適化して計画を進めることができるのか、具体的なポイントを解説します。
荷物預り所など専用の荷物置き場など、専用スペースの設置が自分のホテルに本当に必要かを改めて確認しましょう。専用スペースの必要性が低いのであればその部分をカットし、その分建設費を抑えられます。専用スペースは余分な床面積を必要とし、その部分が広いほど、ホテルの建設費は高くなります。費用をなるべく抑えつつ空間を有効に活用したいのであれば、専用スペース設置の必要性を十分に精査し、もし不要であればカットしてコスト削減に努めましょう。
客室や階層によって設備を変え、異なるグレードの家具や設備、装飾を導入すると費用は高くなります。なぜならば、それぞれ別の設備やデザインを考えなければならず、その分の追加費用が発生してしまうからです。そのため客室設備やグレードをすべて統一し、できるだけ安価なものを大量仕入れするほうが、コストは削減できます。同じ家具や設備であれば、ホールセールでより安く仕入れられるので、低コストで抑えるためにはできるだけ客室設備は統一しておきましょう。
ホテル建設のタイミング次第では、国がホテル改修にかかる費用について補助金を出していることもあります。国からの助成金を活用することで、改修費用を大幅に削減できるため、制度の情報は定期的に仕入れ、積極的に活用しましょう。
また、中小企業向けにホテルの設備導入のための補助金も用意されています。補助金は法人に対して支払われるものなので、ホテル経営を考えているのであれば法人化することを検討し、条件に該当するのであれば積極的な補助金の活用も視野に入れましょう。
IT機器を導入することで、設備投資の費用や人件費を抑えられることもあります。客室にタブレット端末を設置すると、客室電話設置のコストや空調や照明などのスイッチ類をまとめるなどコスト削減につながります。
また、タブレットやIT機器でホテルについての案内やチェックイン・チェックアウトが行えるのであれば、スタッフの駐在時間が減るため、人件費を抑えられる可能性も高いです。緊急事態の場合は、昼夜問わずオーナーやスタッフがホテルに来て対応する必要がありますが、それ以外の場合はホテル内にスタッフがいなくても専用のコールセンターに対応を委託できるため、コストカットにもつながります。
ホテルの工事費は、建設地の地盤・敷地形状・気候などによっても大きく変動します。例えば、軟弱地盤での杭工事・地盤改良、傾斜地の仮設計画・山留工事、岩盤地盤での掘削、寒冷地での厳冬期間の工事中断や採暖・各種寒冷地対策などは、通常の建設工事よりも多大な費用を必要とし、コストアップの要因となります。
ホテルの建設においては、インテリアデザイナーやランドスケープデザイナー、照明デザイナーを始め、多くのデザイナーに仕事を委託する場合があります。デザイナーの提案は、ホテルの魅力や充実度を上げるため重要ですが、全ての提案を取り入れるとすると莫大な費用がかかります。そうした事態を避けるためには、あらかじめ本当に実現したい事、特に大切にしたいことは何なのかを各デザイナーにしっかりと伝え、それを共有させることです。提案の意図を汲みつつその優先順位をつけることで、費用の最適化と理想デザインの両方が実現出来ます。
ホテルの建設費はホテルのグレード、建設地、設備などの変動要因が多くコスト高となる可能性が大きいです。ホテル建設プロジェクトの費用を適切にコントロールするために、PM/CMを起用することも有効です。計画の初期段階から、ホテルプロジェクトに多くの知見を持つPM/CM会社に委託することで、思いがけないコストの増大といったリスクについて専門的な立場からアドバイスや支援を受けることが出来ます。