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大型連休の行動制限が解除され、旅行需要の本格回復に備えた海外投資家によるホテルや旅館市場への投資マネーが活発になっています。
京都市内に4月に開業した高級ホテル「Genji Kyoto」(源氏京都)の総事業費は20億円弱にのぼり、香港の複数の資産家が開発資金を投じたとのこと。そのうちの1人はアジアで不動産開発を行なった経験があり、京都の高い宿泊需要を見込んで投資を決めたようです。
このほかホテルの新規開発も回復しつつあり、国土交通省によれば2022年2月の宿泊施設の着工棟数は、前年同月比の87%増の183棟。前年比プラスは6ヶ月連続になるとのこと。もともとホテル開発は2015年頃から盛り上がりを見せており、2019年のピーク時には月200棟を超えるマンションが建設されていました。
それが情勢の影響を受けて2020年春以降から減少し、2021年初めには月100棟未満にまで落ち込む事態に。2019年のピーク時にはまだ及ばないものの、月183棟にまで増えているのは旅行需要の回復への期待の表れと言えるでしょう。
ホテルの新規開発だけでなく、既存物件の取引も2021年の秋ごろから活発になっており、特に多いのが円安の追い風を受けた海外投資家による購入です。たとえば2021年11月に、香港を拠点とする投資ファンドが大阪市の約300室のホテルを取得したと発表。購入金額は100億円超えとみられています。
また、2022年2月にはシンガポール政府系ファンドが、西武ホールディングスのホテルを含む計31施設を約1500億円で取得することを決定。そのほかにも小田急電鉄が売却を検討しているハイアットリージェンシー東京の入札手続きに複数の外資系ファンドが関心を示しており、隣接するオフィスビルの持ち分と合わせた売却額は1000億円にものぼる可能性があるそうです。
ホテル投資は日本だけでなく、世界規模で活発化しているとのこと。不動産サービスの大手JLLによれば、2021年の世界全体のホテル取引額は前年比の2.3倍となる668億ドル(約8兆5000億円)。2019年の730億ドルに近い水準まで回復しており、2022年は過去最大の2015年の929億ドルと同水準になると予測されています。
ホテル投資が活発になっていくなかで懸念点となるのが、ホテルの新規開業の増加で需給バランスが悪化すること。データ分析ツールのメトロエンジンによると、2021年10月時点での国内の宿泊施設数は約5万5,000。旅行需要が低下する前の2020年1月時点の5万2,000から増えており、過剰投資になる可能性があります。
日本ではまだ観光目的での外国人の入国を制限しており、入国再開に向けた動きはあるものの、それがいつになるかは不透明なままです。このまま宿泊施設が増え続けると需給バランスが悪化し、インフレによって運営コストの上昇・収益の圧迫を招く可能性も。国内のホテルに投資するのであれば、楽観的な見立てではなく、慎重な目利きが求められます。