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ホテルやアミューズメントパーク、航空業界など、閑散期と繁忙期のある業界で導入されているダイナミック・プライシング。以下ではホテルでダイナミック・プライシングについて詳しく解説します。
ダイナミック・プライシングとは、季節や時間帯によって価格を変動させて利益を上げる仕組みのことです。特定の業界で昔から活用されている仕組みであり、ホテルの料金や航空券にも活用されています。
旅行にはオンシーズンとオフシーズンがあり、繁忙期と閑散期で異なる価格設定をしていました。日本で例を挙げると、ゴールデンウィークやお盆、年末年始などに航空券の料金が高くなるのが一例です。
需要に合わせて商品やサービスの価格を変動させるダイナミック・プライシング。参考にするのは月別の売上や年間の顧客動向などであり、さまざまなデータから適切な価格を算出します。その際、年間で生じる人件費や光熱費といった固定費と、変動費の両方の利益を考慮しているのがポイントです。考えなしに価格変動をすると経営が成り立たなくなってしまうため、値決めは重要な要素です。最近では値決めの計算やタイミングの制御にAIが導入され始めました。AIは人が行うよりもスムーズに長期に渡り蓄えられてきた顧客変動の膨大なデータから、最適な価格設定とタイミングでダイナミック・プライシングをできるからです。
ダイナミック・プライシングのメリットは収益を最大化できる点にあります。ダイナミック・プライシング潜在需要にもアプローチできるシステムなので、収益の拡大化を狙えます。そして、価格を需要に合わせて変動させるのは効率が良い手法です。需要があるときは価格を上げ、少ないときは価格を下げる。そうすることで需要があるときは利益を通常よりも多く確保することができ、需要がないときは販売数量を増やすことができるでしょう。
また、設備や人的リソースを有効活用できるのもメリットの一つ。特に費用の内訳において固定費用の割合が大きい企業は、ダイナミック・プライシングで得られる効果も大きいです。ホテルにおける変動費は顧客が一人増えても大きく変動しません。各部屋の光熱費や水道費、食糧費が少し増える程度です。素泊まりという選択肢が増えていることからしても、変動費はより低くなっていると考えられるでしょう。そのため、人件費や賃貸料といった固定費用の割合が大きいほど、販売数量を上げたときに得られる収益が大きくなるのです。
ダイナミック・プライシングのデメリットは、顧客の需要データが少ない場合には向かないことです。最適価格の計算を顧客の需要データを基に行うのがダイナミック・プライシングの特徴。例えば、立ち上げたばかりの新しい店舗など、まだ販売データが蓄積されていない場合はダイナミック・プライシングを実行できません。加えて、販売数データの収集も必要であり、価格変動を決定する際の参考になります。データの収集には時間を要するため、データが少ない初期に導入できないのが難点です。
また、価格競争に巻き込まれて失敗する可能性があることも挙げられます。一般的に顧客はできるだけ安い商品を探すものであり、売る側もそれを理解しているため、競合店の価格を調べてそれ以上に安い値段で提供しようと試みます。しかし、すべての店舗が競い合って最安値を付けようとすると、最終的に価格は0円になるでしょう。そうなると商売は成立しません。
つまり、顧客の需要データを基に価格を決定することがダイナミック・プライシングにおいて重要なのであり、競合価格を基準にすると失敗します。そのため、価格競争に巻き込まれやすいプラットフォームには注意が必要です。価格競争で勝負するのではなく、商品のオリジナリティで勝負する意識を持ちましょう。
顧客の数が増えてもスタッフの数が変わらないホテル業界は、コストが上がりにくいのが特徴的。可能な限り高価格で全ての部屋を売り切ることが目標です。ダイナミック・プライシングを成功させるためには、需要の予測を立て、日ごとに部屋料金を違う価格に設定し、予約日まで価格を変動させ続けなくてはなりません。予想より部屋の埋まるペースが早ければ値上げ、遅ければ値下げするのが基本です。上記のように価格変動を行えばブッキングカーブの通りに予約を促すことができるでしょう。
ホテル業界でもダイナミック・プライシングは活用されています。星野リゾートがその一例であり、土日や祝日は宿泊料を高値に設定。混雑する時間帯も高値に設定しており、逆に利用者が減る平日や時間帯は宿泊料を安値に設定しています。そのように経営することで収益の最大化に成功しました。
参照元:Funda Navi(https://navi.funda.jp/article/dynamic-pricing)
入場チケットにダイナミック・プライシングを取り入れているユニバーサル・スタジオ・ジャパン。入場チケットの価格上昇が9年に渡り続いていましたが、繁忙期と閑散期とで価格に差をつけることで入場者の制御に成功しました。混雑が緩和されたり、顧客満足度が上がったりなど、ダイナミック・プライシングがさまざまな効果を発揮している事例です。
参照元:MarkeTRUNK(https://www.profuture.co.jp/mk/column/10043)
OYOはホテル予約サービスにおいてダイナミック・プライシングを導入し、成功しています。OYO が成功した要因は、1室あたりの売上を最大限に引き出すためにプライシングを徹底したこと。蓄積された膨大な量のデータから、1日に6000万件、全世界の宿泊料を常時適正価格で設定できる仕組みを導入していま。ユーザーのニーズに応えられる環境を整え、企業は大きな成長を遂げました。
参照元:SPICE FACTORY(https://spice-factory.co.jp/development/dynamic_pricing/)
日本航空でもダイナミックプライシングモデルは使用されています。取り入れられているのは座席価格です。航空業界にも利用者の多いゴールデンウィークや年末年始などの繁忙期と閑散期があり、値段に差をつけることで収益の最大化を図れます。
参照元:Funda Navi(https://navi.funda.jp/article/dynamic-pricing/)