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ホテル投資のM&A

近年、ホテル業界では人口減少や少子高齢化、市場の成熟化などを背景に、新たな成長機会を模索する動きが活発化しています。特にコロナ禍での打撃から立ち直る中で、既存の資産やブランドを活かしながら事業規模を拡大したい投資会社や個人投資家にとって、ホテルM&Aは短期間で収益基盤を確立できる有力な手段といえるでしょう。

この記事では、ホテル投資とホテルM&Aを理解し、実際の投資検討に役立つポイントをまとめています。

そもそもホテル投資とは?

ホテル投資とは、ホテルという建物やブランドを「買う」ことによって、その運営から得られる宿泊料や付帯サービス収益を長期的に確保しようという投資手法です。

たとえば、都市部にあるビジネスホテルを一棟まるごと購入し、その稼働率や客室単価を改善する努力を続けることで、投資した元本を回収しつつ利益を積み上げていきます。

代表的な投資形態には、大きく分けて「個別物件投資」「REIT(不動産投資信託)」「コンドミニアム型投資」の三つがありますが、いずれも見込まれる旅行需要や地域特性をしっかり分析し、安定運用できる物件を探す点が共通しています。

ホテルM&Aとは何か?

M&Aとは「合併(Merger)と買収(Acquisition)」の略で、企業同士がくっついたり、一方がもう一方を買ったりすることを示します。ホテルM&Aでは、主に四つのスキームが使われます。

まず「株式譲渡」は、売り手企業の株を買い手がまとめて取得し、会社全体を引き継ぐ方法です。次に「事業譲渡」は、ホテル事業部分だけを切り出して買い取るやり方で、許認可や設備を選んで移すことが可能です。三つ目の「会社分割」は、大きな会社からホテル事業だけを分社化して新会社に移し替え、最後に「合併」は二つ以上の会社を一つに統合する手続きです。

それぞれに特徴があり、株式譲渡は手続きが比較的スムーズですが、見えない負債まで丸ごと引き継ぐリスクがあります。事業譲渡では、譲渡対象を自由に選べる一方で、旅館業の許可を取り直す必要が生じることがあります。ホテルM&Aでは特に「旅館業法」の許可が維持できるかどうかが成功のカギとなるため、適切なスキーム選びと専門家のサポートが欠かせません。

ホテル特有のポイント

他業種にないホテルM&Aならではのポイントとして、まず「営業許可の承継」が挙げられます。旅館業法に基づく営業許可は、通常、会社形態や名前が変わると再申請が必要になるため、買い手側は許可取り消しリスクを避けるため、事前に役所と調整を行います。

次に「不動産評価」ですが、ホテルは土地・建物・内装設備など資産構成が複雑であるため、専門の鑑定士による評価が必須です。さらに、ホテルは季節やイベントによって稼働率が大きく変動する業態のため、過去の実績データを基にシミュレーションし、稼働率が落ち込む時期のキャッシュフローも十分に試算しておく必要があります。

また、コロナ禍以降は老朽化した施設のリノベーション需要が高まっており、買収後に改装コストがかかるケースも多いため、事業計画の段階で将来の資本的支出(CAPEX)を盛り込んでおくことが成功の秘訣です。

ホテル投資とM&Aの関係性

投資手段としてのM&A

投資家にとってM&Aは、ゼロからホテルを開業するよりもリスクを抑えつつ収益を得られる手段です。既存ホテルを買収すれば、すでに顧客基盤や運営体制、予約システムが整っているため、営業が始まるまでの時間を大きく短縮できます。

さらに、複数のホテルを自社グループ内でまとめて運営すれば、マーケティングや仕入れ、ITシステムを一括管理できるため、コスト削減効果やシステム統合による業務効率化といったシナジーも大きな魅力です。こうした統合運営のスキームは、投資利回りを高めるうえで非常に有効です。

投資戦略の一環としての売却

一方で、ホテルオーナー側にとっては、M&Aを通じた「売却」こそが投資リターンを確定させる大きな機会になります。たとえば、長年にわたってホテルを運営し、一定のブランド価値や収益実績を積み上げたタイミングで売却することで、高い譲渡価格を実現できます。また、後継者がいない場合、アーンアウト条項(売却後一定期間、元経営者が業績に応じた報酬を受け取る仕組み)を設定することで、経営の引き継ぎや従業員保護を図りながら自身の利益も確保できます。売却準備として行う設備投資やマーケティング強化は、結果的に売却価格を押し上げ、投資戦略の一部として機能します。

ホテルチェーン拡大戦略と投資の連携

大手ホテルチェーンでは、M&Aをチェーン拡大の中心戦略として位置づけるケースが増えています。同じグループ内に高級ブランドとエコノミーブランドを併存させ、市場の多様なニーズを同時に取り込むことで安定収益を確保します。さらに、グループ共通の予約プラットフォームや会員プログラムを横断的に展開することで、顧客ロイヤルティを高め、収益機会を最大化します。こうしたチェーン全体を俯瞰した投資判断は、新規出店リスクを抑えつつ効率的に市場シェアを伸ばすうえで有効です。

実際の活用事例

地方旅館の事業承継事例

ある地方の老舗旅館では、後継者がおらず経営が先細りするリスクが高まったため、地域金融機関が組成したファンドに事業譲渡を実施しました。投資家側は資金力を活かし老朽化した客室や浴場をリノベーションし、新たにインバウンド向けの体験プログラムを導入しました。その結果、稼働率は20%以上上昇し、地域の雇用を維持しながら観光振興にも寄与しています。

都市ホテルのブランド統合事例

都市部にある中規模シティホテルでは、欧米系ホテルグループが株式譲渡で買収し、自社ブランドへの切り替えを実施しました。買収後は多言語対応スタッフの教育や最新キャッシュレス決済の導入を進め、従来の国内顧客だけでなく訪日外国人客も積極的に取り込んでいます。その結果、リピーター率が約15%向上し、客室単価も10%以上アップしました。

まとめ

ホテル投資とM&Aの基礎から実践事例まで解説しました。また、これまでご紹介してきたホテル投資やM&Aの手法は、一般的に客室数の多いシティホテルやリゾートホテルを想定していました。

しかし、近年は土地取得費や建設費が高騰するなかで、より小規模かつ効率的に収益を狙える「コンパクトホテル」が注目を集めています。従来型ホテルで求められる大規模な資本投下や運営コストを抑えつつ、安定した稼働実績を引き継げる点で、M&Aや投資ポートフォリオの一部として組み込みやすいのが特徴です。

ホテル投資を検討している方は、コンパクトホテルにも目を向けてください。

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