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ホテル投資を始めるには、旅館業法や消防法、建築基準法など、事業運営に関わる法律や許認可の理解が必須です。投資前に必要な法令の種類と内容を把握し、必要に応じて専門家のサポートも受けながら適切に準備を進めていきましょう。
宿泊施設の中でも一定の規模と設備を備えた施設を対象としたホテル営業許可。基本的には部屋タイプを洋室を中心とし、かつ各客室に洗面設備やトイレを備えることが許可の条件となっています。不特定多数の旅行者やビジネス客を受け入れることを想定している点が特徴で、とりわけ都市部や観光地での開業に多くみられる形態です。
客室数や設備に関しては細かな基準が定められているため、事前に設計段階から基準を満たす必要があります。
和室を主体とした宿泊施設を運営する際に必要となるのが旅館営業許可。畳敷きの客室や大浴場を備え、日本的な滞在環境を提供することを前提にしている点が特徴の施設です。観光目的で長期滞在する旅行者や団体客に多く利用され、地域の文化体験や観光振興と結びつくケースも多く見られます。
客室数や設備については独自の基準が設けられているため、申請にあたっては法令を満たすことに加え、地域性や需要を踏まえた施設計画が重要になります。
簡易宿所営業許可は、比較的小規模な宿泊施設を対象とする許可の一種。ゲストハウスやカプセルホテル、合宿所などが典型であり、複数人で1室を利用する形態が認められています。低価格での運営が可能で、バックパッカーやインバウンド需要に対応する施設として注目されています。
近年、空き家活用や地域資源の有効利用の一環としても簡易宿所の利用が進んでいますが、宿泊人数や避難経路などの安全基準は自治体ごとに細かく規定されるため、開業を目指す際には事前によく確認しておくようにしましょう。
旅館業(下宿)営業許可とは、長期的に利用者へ部屋を貸す形態の施設に必要となる許可。学生や単身赴任者などの生活拠点として利用されることが多く、施設の中には食事を提供するところも少なくありません。日々不特定多数の利用者を対象とするホテルや旅館とは異なり、特定の利用者に継続して住まいを提供する点が特徴です。
利用は日単位ではなく月単位とするのが前提です。居住と宿泊の中間的な性格を持つイメージです。建物の構造やサービス内容に応じて独自の基準が設けられているため、安定運営には基準の理解と順守が求められます。
火災の発生を防ぐこと、万が一火災が発生しても被害を最小化することを目的とした法律が消防法。宿泊施設は、スプリンクラーや消火器、非常口表示、火災報知器などの設備設置が義務とされ、消防署の検査に合格しなければ営業を開始できません。
また、開業後も定期点検や避難訓練を実施する必要があり、安全対策を怠ると営業停止や罰則の対象となる場合もあります。宿泊者の命を守るために、最も基本的かつ重要な法令の1つとなります。
建物の安全性や利用方法を定める法律が建築基準法。ホテルはもとより、あらゆる建築物を建設・運営する際には必ず遵守しなければならない法律です。耐震性や採光、換気、防火構造など多方面にわたる基準が設けられており、宿泊施設はこれらを満たすことが求められます。
なお、建設予定地の用途地域によってはホテル建築が制限されることもあるため、投資に先立って立地の確認は欠かせません。既存建物を転用する場合には用途変更の手続きが必要で、基準を満たさなければ旅館業法の営業許可も取得できません。
食品衛生法とは、食事を提供する施設の安全を守るために定められた法律。宿泊施設で朝食を提供したり、レストランを運営したりする際、保健所の許可を得た上で、食品衛生責任者の設置が義務付けられています。調理場の広さや換気、手洗い設備、食材の保管方法など、衛生管理の基準も詳細に規定されています。
食品衛生法に違反した場合、営業停止や罰則を受ける可能性があるため、開業前から綿密な運用設計が必要です。
風営法は、深夜営業や特定の遊興施設を規制するための法律です。ホテルそのものには直接適用されませんが、施設内にバーやカラオケ、クラブなどを設置する場合には要注意。深夜0時以降の営業や遊興を伴うサービスを提供する予定であれば、警察署への届出や許可が必要となります。
もし風営法に違反した場合、営業停止を含めた罰則の対象となります。ホテルの付帯施設は収益源となる一方で、法律違反のリスクも伴うため、事業計画の段階から風営法の規制を十分に把握しておくようにしましょう。
上記でご説明した通り、ホテル投資には多くの法律や許認可が関わります。開業時に各種法律を遵守して必要な許認可を取得することはもちろんですが、法改正があればその都度理解が必要となる点にも要注意。対応には専門性が求められるため、ホテル経営を請け負っている会社などのプロに相談しながら運営を進めていくようおすすめします。