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近年の日本におけるホテル投資は、円安と世界的にも比較的低く推移する金利環境によって、投資利回りのスプレッド(投資利回りと調達コストの差)が高まっている傾向があります。さらに、インバウンド需要を中心とした観光業全体の回復・成長も相まって、2025年にかけてホテルマーケットが引き続き好調を維持するとの期待感が強まっている状況です。
こうした環境においては、投資家が物件を取得するための調達コストが抑えられやすいといえます。その結果、ホテル投資の利回り(投資に対する収益率)と借入コストの差が広がりやすく、投資家にとっては「うまみ」が大きい状態になりやすいのです。
観光庁が公表している「宿泊旅行統計調査」によると、国内の宿泊需要は新型コロナウイルス流行以前の水準に着実に近づいてきています。2023年以降は、海外からの渡航制限が大幅に緩和された影響もあり、外国人宿泊者数や国内旅行者数がともに上昇に転じています。
今後、2025年前後にかけて大規模イベントや各地方の地域活性化施策などが続けば、観光客の増加によるホテル需要の高まりが一層進むことが見込まれています。これにより、稼働率上昇と宿泊単価の改善が期待され、結果的にホテル投資の利回りを押し上げる要因となるでしょう。
※参照元:観光庁「宿泊旅行統計調査」(https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/shukuhakutokei.html)
日本不動産研究所が公表している不動産マーケット分析の一つとして、「不動産投資家調査」があります。第51回(2024年10月時点)の調査によると、宿泊特化型ホテルへの期待利回りは主要都市でおおむね4%台後半から5%台前半に分布しているという結果が示されています。
具体的には、東京や大阪など主要都市部では4.7〜5.2%程度、地方都市や観光地においては5.0〜5.5%を見込む声が多く、他のアセットクラス(オフィスや住居など)と比較しても相対的に高い水準を維持しているといわれています。
さらに、2025年はインバウンド需要のさらなる回復に加え、大阪・関西万博など大規模イベントの影響も踏まえれば、宿泊施設の稼働率や宿泊単価の上振れが期待できるとの見方があります。こうした背景から、ホテル投資の利回りについては今後も高い関心が集まっています。
※参照元:日本不動産研究所「不動産投資家調査」【PDF】(https://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2024/11/92dff5e2061224454663b8f5b0392ebe1.pdf)
ホテル投資を検討する際、個人で一棟を買い取るのはハードルが高いケースもあるため、投資信託の仕組みを用いた「ホテルリート」に目を向ける方も増えています。ホテルリートは、複数の投資家から集めた資金で複数のホテル物件を運用し、その賃貸収益や運営収益を投資家に分配するというものです。
以下では代表的なホテルリート3銘柄を取り上げ、参考までに現在の分配金利回り(※)を紹介します。
全国各地の宿泊特化型ホテルに投資しており、インバウンド需要回復に伴って稼働率が改善していると言われています。2025年3月時点の分配金利回りはおおむね5%台後半から6%台前半の水準で推移しています。
ビジネスホテルからリゾートホテルまで多様なホテルに投資しながら、運営会社と協力してバリューアップを図る施策を打ち出しています。2025年3月時点の分配金利回りは5%前後の利回りが見られるケースが多いとされています。
国内外で知名度を誇る「星野リゾート」ブランド施設への投資を主軸に展開しています。リゾート需要の回復やブランド力を背景に、2025年3月時点では4〜5%程度の利回りで推移している例があるようです。
(※)いずれも投資口価格や将来の分配金予想に応じて変動します。実際の最新データは各リートのIR情報や投資口価格を確認する必要があります。
ホテルリートは、低額から分散投資ができる利点がある反面、客室の稼働率や宿泊単価、世界情勢の影響を直接受けやすい点には注意が必要です。とはいえ、2025年に向けての観光業の活況を取り込みたい投資家にとって、今後も要注目の選択肢と言えるでしょう。
利回りとは年利回りとも呼ばれることがあり、元金に対してお金がどのくらい増えたかをあらわしています。投資した金額に対する収益の合計を、運用した年数で割ることで一年あたりの平均利回りとして算出します。
例えば100万円を元本に3年間運用し、30万円の分配金を得さらに130万円で売却したとします。この場合、元本である100万円から60万円利益が出たことになります。60万円を3年で割った20万円が1年間での利益となります。つまり、利回りは20%ということになります。
表面利回りは「物件価格に対して、年間の家賃総額をどれだけ効率よく得られるか」を数値化したものです。投資向けの物件を探す際に、「表面利回りで○%」と記載されています。
年間家賃収入÷税込物件価格×100
実質利回りとは、「年間の収入から諸経費を差し引いた実質の利益」を指します。
投資用物件には管理費、保険料、固定資産税と諸経費が必要です。実質利回りで注意すべきは、利回りが毎年変わる可能性が高いということです。広告では、表面利回りだけが記載されていることが多いので、単純な表面利回りだけではなく、そのときの実質利回りを把握して、損得を正しく見極めることが大切です。
(年間家賃収入-年間コスト)÷(税込物件価格+購入時コスト)×100
印紙税は、経済取引に伴って作成する契約書や金銭の受取書(領収書)などの文書に課税される税金です。
物件を購入するときは、土地や建物に買った人の所有権を登記します。登記簿に土地や建物の所有権を記録して公示するための手続きです。登録免許税は、この登記手続きの際に国に納める税金のことを指します。税額は土地や建物の評価額(固定資産税評価額)に税率をかけて計算します。
また、登記の際に司法書士に手続き依頼をした場合、その依頼手数料も必要になります。
不動産取得税とは、土地や建物を購入ときにかかる税金です。不動産取得税の税額は下記の計算式で求められます。
課税標準額(その不動産の価格)×税率
課税標準額は、実際に売買した際の価格ではなく、原則として固定資産税評価額で計算されます。
仲介手数料は、不動産売買のさいに仲介した不動産会社に支払う成功報酬のことです。仲介手数料の額は不動産業者がそれぞれ設定しますが、自由に設定出来るものではありません。宅地建物取引業法により、取引額によって上限額が定められており、多くはその上限金額を請求する不動産業者が多くなっています。
また修繕積立金とは、この費用のうち長期修繕計画等に基づく大規模修繕など大掛かりな工事のために充てられる費用です。
管理委託費は、物件の点検や清掃などの管理業務を委託している管理会社に、業務の対価として支払う費用です。
固定資産税とは、所有する土地や建物などにかかる税金です。土地や建物のほか、償却資産(事業用資産)も対象となります。
都市計画税とは、都市計画事業や土地区画事業の費用に充てることを目的にした市町村税(東京23区の場合は都税)で、市街化区域(すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域)内に土地や建物を持っている人に課税されます。