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中銀カプセルタワービルの解体作業が2022年4月から開始されているなか、同ビルの著作権を持つ黒川紀章建築都市設計事務所が再建築の権利を売却すると発表しました。ここでは、中銀カプセルタワービルがどのような建築物なのかや権利売却までの流れについてまとめています。
中銀カプセルタワービルは、日本を代表する世界的建築家の黒川紀章氏が設計し、世界で最初に実用化されたカプセル型の集合住宅です。中銀カプセルタワービルが竣工されたのは1972(昭和47)年で、キューブ状のカプセルが積み重なった独特な外観は国内外からの評価も高く、海外から見学に訪れる人もいるほど。ハリウッド映画やMVのロケ地としても使用されています。
中銀カプセルタワービルは、設計者の黒川氏を中心に立ち上げられた日本発の建築運動「メタボリズム」を代表する建築物です。もともとは25年ごとにカプセルが交換される計画でしたが、資金面の問題で一度も交換されることはなく、建物が老朽化。取り壊しや建て替えの議論が繰り返し行われていましたが、2022年4月12日から解体工事が行なわれることが決定されました。
ちなみに中銀カプセルタワービルの「中銀」は管理会社の中銀グループのことで、中部銀行や中国銀行などとは一切関係はありません。
中銀カプセルタワービルは、2018年に1ヶ月間のお試し宿泊体験としてマンスリーカプセルの提供が行なわれていました。オーナーや住人が結束した「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」の一環として貸出が行われ、管理組合で敷地売却が決議されるまでの約2年半で200人以上が利用したとのこと。
マンスリーカプセルとして提供されていたのは8室で、そのうちの1室は無印良品がインテリアのコーディネイトを担当。残りの7室は1972年当時の棚やオーディオの面影を残したオリジナルカプセルが提供されていました。
建物の老朽化を理由に2022年4月12日から解体作業が続いている中銀カプセルタワービルですが、黒川紀章建築都市設計事務所が中銀カプセルタワービル再現プロジェクトとして同ビルの再建築の権利を販売すると発表。販売されるのは、黒川紀章建築都市設計事務所が所有する同ビルの著作権・3D CADデータ・利用権です。
購入者は中銀カプセルタワービルの意匠とCADデータ・図面に基づく設計図を使用して建築・利用・販売などができ、建築場所や用途などに制限はありません。たとえば中銀カプセルタワービルを完全再現したり、カプセルを数個組み合わせた一軒家や小規模集合住宅を建築して販売・賃貸したりすることが可能。
専門家によれば、中銀カプセルタワービルのような文化的価値のある建築物の再建築を設計者や著作権者が公認するのは、世界的にもかなり珍しい事例とのことです。