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ここでは、ニッセイ基礎研究所がまとめた「不動産クォータリー・レビュー2022年第3四半期」を見ていきます。ホテル投資市場やマンション投資市場など、投資額や投資動向、今後の展望も解説していきます。
2022年第3四半期の商業セクターの動向は、新型コロナによる行動規制の緩和で都市部における人流の回復を受けて百貨店を中心に売上が回復傾向にあります。
商業動態統計によると、2022年第3四半期(7-9月)の小売販売額(既存店のみ)は百貨店が+17.2%(前年同期比)と2022年第2四半期(4-6月期)に続いて2ケタの増加となり、コンビニエンスストアが+3.0%、スーパーが-0.5%でした。
宿泊旅行統計調査によると2022年7-9月における累計延べ宿泊者数は2019年同期比で-22.8%と減少し、このうち日本人が-8.2%、外国人が-92.1%でした。コロナ禍にあって海外からのインバウンド需要の低迷が続いていますが、10月に外国人観光客の入国制限が緩和されたことで今後の回復が期待されています。
また世界最大手の事業用不動産サービスのCBREによると、2022年9月末現在首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率は前期比+0.8%の5.2%となりました。EC事業者を中心にテナント需要はあるものの、供給の増加により事業者の選択肢が増え競争も激化しています。近畿圏の空室率は1.7%(前期比-0.4%)と低い水準になっています。
東京都心部を中心に地価が上昇しています。地価の上昇は、住宅地だけでなく商業地にも広がっています。国土交通省の「地価LOOKレポート(2022年第2四半期)」によると、全国80地区のうち上昇が「58」(前回46)、横ばいが「17」(21)、下落が「5」(13)となっており、住宅地は23地区全てが上昇となりました。住宅地は賃貸マンション市場の堅調さが際立ったことから上昇を続けており、商業地は新型コロナ禍での行動規制の緩和による経済活動正常化への期待感で多くの地区で上昇又は横ばいになっています。
三幸エステートが公表した『オフィスレント・インデックス』では、2022年第3四半期の東京都心部Aクラスビル成約賃料(月坪)は27,379円(前期比-5.8%)に下落し、空室率は4.0%(前期比+0.2%)に上昇しました。東京都心部でのオフィスビルの空室が目立つ結果となりました。この要因として、新築ビルが空室を抱えたまま竣工したほか、企業の働き方改革や戦略の見直しによるオフィス移転や部分解約が相次いで行われたためと考えられます。
また、成約賃料(月坪)は今後年を追うごとに減少しており、2021年の賃料を「100」と基準にした場合、2022年は「93」、2023年は「91」、2026年は「88」と、2013年の水準まで下落するだろうと予想されています。
東京23区のマンション賃料は、コロナ禍において在宅勤務や家時間が増えたことによるファミリータイプマンションの需要が高まり賃料の上昇が目立ちました。新型コロナの影響で単身赴任や若者の都心進出が減少し、シングルタイプのアパート需要が下落していましたが、これについても底打ち感がみられます。三井住友トラスト基礎研究所・アットホームの調査によると、2022年第2四半期は前年比でシングルタイプが+0.5%と微弱に、ファミリータイプが+7.0%と上昇しています。
2022年第3四半期(7-9月)の東証REIT指数は、2022年6月末比で-1.1%下落しました。セクター別では、オフィスが-1.9%、住宅が-1.9%、商業・物流等が-0.1%でした。新型コロナの行動制限緩和による経済正常化への期待から、ホテルセクターが上昇した一方で、円安や海外金利上昇への警戒感から時価総額上位銘柄を中心に売り注文が殺到し期末にかけて下落に転じました。