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無人ホテルとは文字通り、従業員が常駐しないホテルのことです。IT技術を駆使することで、フロント業務など普段は人が行っている業務を削減することで人的コストの削減や収益性の向上も図れます。元来、フロント業務を無人化して「セルフチェックインシステム」を導入するホテルはありましたが、もしもに備えてスタッフが1名事務所などに常駐していました。しかし無人ホテルでは常駐のスタッフが1人もおらず、ホテルの運営者や管理者はホテルから離れた場所にいます。ただし無人ホテルでも清掃やベッドメイキングには人が必要となりますし、ホテルによっては日中のみスタッフがおり夜間は完全無人という形態もあります。
無人ホテルが増える理由は以下の3点が考えられます。
2020年5月に一般社団法人日本ホテル協会から、厚生労働省や新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が示した新しい生活様式をまとめた「ホテル業における新型コロナウイルス感染症感染拡大予防ガイドライン」が提示されました。ガイドライン内では、換気の徹底や館内の消毒を適時行う事、対面業務の際に一定の距離を取ることなどが推奨されています。無人ホテルでは、IT技術を駆使しシステムやロボットを活用することで対人業務が省略化されるので、人同士の接触機会が減少し感染の拡大防止に効果的です。
入力忘れや予約のブッキングなど、ヒューマンエラーが起りやすい予約や受付業務などをシステムが行なう事で、そうしたミスが発生しないようにしています。人間が行う業務としては、システムメンテナンスやロボットの整備、またベッドメイクや客室清掃となります。
無人化にする1番のメリットは、人件費を削減できることです。システムやロボットの導入に高額な初期費用がかかりますが、ランニングコストはメンテナンス費と電気代のみなので、長期的に見ると人件費よりも低コストで運営が可能になります。ロボット接客がまだ珍しいからこそ、人に接客される以上の驚きや喜びがあるかもしれません。
無人ホテルを開設するにあたり、法的に問題ないか心配になるかと思います。日本では、運営自体は『旅館業法』に準じて行う必要があります。
フロントの設置や緊急時の対応(安全対策)、宿泊者情報の把握と鍵の受け渡しなどが重要な論点となりますが、中でもフロントの設置が一番気を付けなくてはならないものです。
フロントに関しては、法律上原則設置が必要ですが、基準を満たした設備(フロントに代替する機能を有する設備)を備えれば必ずしも必要ではありません。基準として、『宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との間の客室の鍵の適切な受渡し及び宿泊者以外の出入りの状況の確認を可能とする設備を備えていること』に適合していれば問題ありません。
無人ホテルの設備が法律に則ったものでも、県や地域によっては設置や運営に条例が適用される場合があります。これは旅館業法で定められた基準の上にさらに守るべき県や市区町村単位での基準なので、無人ホテルだけでなく宿泊施設を開業する際はこの条例も守る必要があります。
無人ホテルはスタッフがいないので、緊急時の場合即座に対応できる仕組みを構築しておきましょう。事業者や管理者、または警備会社がおおむね10分以内に対応できる体制が必要です。
防犯の面では、ITシステムを使用して不正侵入を未然に防ぐ方法もあります。エントランスのオートロック化やゲスト以外のエレベーター使用不可対応などがあります。
無人ホテルで使用されるITシステムでは、遠隔や非対面でもビデオ通話によりゲストの顔を確認できたり、宿泊者情報を取得ができるセルフチェックインシステムがますので、これらを活用しましょう。
鍵についても一般的な物理キーではなく、暗証番号を使って解錠するスマートロックを活用しましょう。ゲストにはチェックイン時に暗証番号を通知する仕組みになっています。
今後、スマートホテル市場が活性化していくと予想されています。2020年の世界のスマートホスピタリティ分野は60億ドル。対して2027年までには249億8000万ドルに成長する見込みです。ホテル業界は世界的に人件費の高騰や人材不足に悩まされることが多いため、施設のスマート化による業務効率化・コスト削減策が今後ますます期待されています。
※参照元:NEWS CAST(テクノロジーに強いホテルチェーンの市場規模は2028年に1148.5億米ドルに達する見込み-最新予測)
2016年8月、日本で初めてのスマートホテルが福岡市に建設されました。福岡市は「国家戦略特区」に指定された都市で、「IoT開発拠点を目指し、規制緩和に取り組んでいく」と宣言しています。そのためIoTを駆使した新しい試みであるホテルのスマート化を始めるのに最もふさわしい場所でした。
2023年現在でも、福岡市には数多くの無人ホテルやスマートホテルがあり、新しいホテルも建設されています。
スマートフォンをホテルのルームキーとして使用するシステムです。専用アプリを使用することにより、鍵の代わりとしてだけでなく、オンラインでチェックイン・チェックアウトすることも可能です。アプリによっては多言語対応可能なため、海外からのお客様にも効率よくサービスを提供できます。
ホテル経営におけるメリットとして、人件費の削減やルームキーの発行コストの削減が挙げられます。またお客様にとっても待ち時間を減らせる、スタッフと接する煩わしさがなくなるなどのメリットがあります。
スマートフォンをホテルの鍵代わりに使用する「スマートホテルキー」は、使用するために専用のアプリが必要です。そのため初めて使用する際に、手間取ってしまうリスクがあります。しかしスマートロックシステムは専用アプリが不要なため、お客様にとってより利用しやすいサービスです。
客室開錠のための暗証番号は、宿泊されるお客様へメール等で通知。お客様がドアについたテンキーを操作することで、入室可能になります。暗証番号は都度変更可能です。鍵の紛失防止にもつながります。
見た目は通常の姿見のようですが、客室やホテルのインフォメーションを表示したり客室内の家電をコントロールできるIT化された鏡です。
時計やアラーム機能、天気などの情報表示、客室照明の調整やカーテンの開閉、フロントとのやり取り、すべてがスマートミラーのタッチパネルのみで操作可能です。
スマートミラーの見た目は鏡なので、客室内のイメージを損なうことなく設置できます。
多言語対応のチャットオペレーターシステムです。外国のお客様が日本のホテルを予約する際、質問したい内容が自国語で表示できない場合はホテル予約を断念してしまう恐れがあります。チャットボットは、ホテル側からのFAQとお客様からのお問い合わせを常に学習することで、お客様からのどのような質問でもお客様の言語にてAIが即時回答。集客チャンスを逃しにくくなります。