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世界的な新型コロナウイルス感染症の影響で、海外からの旅行客だけでなく国内旅行者の数も激減していました。その中で、ホテルは経営維持のために人員削減を行いましたが、コロナが落ち着き旅行需要が一気に増えたことで、離れた働き手が戻らず人手不足に陥っています。
旅館・ホテル業は、飲食業と並んで慢性的な人手不足・人材不足が大きな問題となっています。帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2022年4月)の調査によると、正社員の人手不足割合は45.9%、非正社員の人手不足割合は27.3%となっています。
コロナ禍による需要の減少で、なんとなく人手不足感が緩和されていた「飲食店」「旅館・ホテル」で、再び人手が不足しているという結果が公表されています。そもそも、コロナ禍以前から、宿泊業や飲食業は、万年人手不足とも言われています。
※参照元:帝国データバンク(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p240308.html)
サービス・ツーリズム産業労働組合連合会は、2024年4月26日に加盟組合を対象に実施した人材不足の影響に関する調査結を発表しました。これによると、人材不足の影響で営業制限を実施したという旅行業・宿泊業の事業者は85%に上りました。
その制限の内訳は、宿泊業では営業日数の縮小(51%)、営業時間の短縮(33%)、客室などの販売数の制限(27%)、来店予約の実施(27%)などがありました。人手不足により、需要に対応できず止む無く営業制限を実施するホテルも増えています。
ホテル業界はもともと人手不足が顕著な業界ですが、現在もなお人手不足に悩まされています。その理由について解説していきます。
大阪・関西万博の開幕(2025年4月)の影響で、大阪ではホテルの建設ラッシュが始まっています。また、万博後の統合型リゾート施設開業などにより継続的に観光客の増加が見込まれることから、2024年~2025年にかけて高級ホテルが続々とオープンする予定です。
ホテルの開業は、計画から実際の開業までに、建設なども含め年単位での計画が必要となります。なので、建設を決定してすぐに開業できるはずもなく、長い期間をかけて開業に至るわけです。そのため、その間に人員を募集したりするので人材獲得にも力を入れなければなりません。
求人数の母数が大きくなればなるほど、人材は選ぶ幅が広くなるもの。ホテル側としては他のホテルが増えることは、人材の取り合いがより熾烈になることにつながります。
ホテル業界は離職率の高い業種です。例として、2020年度と2021年度のホテル業界の入職者数と離職者数を挙げてみます。
生活関連サービス業だと入職者数432.8、離職者数337.0。教育・学習支援業だと、入職者数624.2、離職者数537.3となっており、ほかの業種と比べても比較的離職率が高い結果となりました。
※参照元:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/22-2/dl/gaikyou.pdf)
国税庁の「令和2年度の民間企業の平均給与」は433万円に対し、ホテル・旅館業界の平均給与は339万円と平均以下になっています。
※参照元:厚生労働省(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2020.htm)
ホテルは基本的に24時間365日稼働しており、人手不足により休日出勤や長時間労働が常態化しています。
以上のようになっています。
これらの改善に向けて、外国人労働者の採用や、給与の見直しなど取り組みに力を入れているホテルや、ITツールの活用やホテル業態の見直しをするホテルもあります。
なるべく営業制限をかけずに済むよう、今後も工夫が必要になってくるでしょう。