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近年は大地震や大雨による洪水などで多数の住宅が倒壊し、住民たちが生活の場を失うという事例が、国内でも多く見られています。こうした災害時においては、被害に遭った人々を救い、仮住まいを提供することが急務となっていきます。国や自治体が迅速に対応し、被災者が新たなスタートを切るためのサポートが必要になります。
そんな場面で活躍するのが、レスキューホテル。被災者の生活空間として機能させる、仮住まいのかたちです。
しかし既存のホテルを利用するのはいくつもの条件をクリアしなければなりません。
まず、ホテルと被災地が離れている場合は、当然、仮住まいとして充分に機能できません。また、もし被災地近くのホテルであれば、ホテル自体も甚大な被害を受けていることが考えられ、積極的な被災者の受け入れが難しい状況になっているでしょう。
そこで注目したいのが『コンテナホテル』です。コンテナはもともと、海上や陸上の貨物運搬に活用されている巨大な容器です。
土地や環境に合わせてパズルのように組み合わせることで、住居はもちろん、ホテルや店舗など営業目的の建造物としても機能させられます。近年はその柔軟さから世界中から注目が集まっているほどなのです。
コンテナホテルの数は国内でも徐々に増え始めており、今後、大規模な自然災害が発生した際に、レスキューホテルとして活躍することが期待されています。
レスキューホテルは東日本大震災での経験を得て作られました。震災発生後はほとんどの人が仮設住宅に入るまでの期間を避難所で生活していましたが、その生活は決して快適と言えるものではありませんでした。
そこで開発されたのが移設性を持つコンテナホテル「ザ・ヤード」シリーズです。このコンテナホテルは 宮城県石巻市で復興従事者用宿泊施設として使用したコンテナを栃木県佐野市に移設してオープンしたホテルの経験を元に開発されました。
現在では43もの自治体がレスキューホテル出動要請のための協定を締結するなど、活動の場は大きく広がりを見せています。
2020年4月、長崎のクルーズ船で新型コロナウイルスの感染が発覚した際、レスキューホテルが出動した実績があります。迅速な配備やその快適性が高く評価され、この出動をきっかけにレスキューホテルの必要性や知名度が広がりました。
2020年6月にはPCR検査の強化を目的として東京都三鷹市や東京都千代田区に出動。年間を通して快適に診療ができることから、医療従事者の負担を軽減すると注目されています。
大規模な自然災害が発生した際、被災者は近隣の学校や公民館などの公共施設への一時避難が一般的です。災害に遭遇したことに加え、以後の生活への不安とプライバシーの確保が不十分な空間に居続けることで、被災者にとっては大きなストレスが生じてしまいます。
災害発生時、被災者の仮の住居として準備されるのが仮設住宅です。仮設住宅は「建設型」と「借り上げ型」の2種類に分類されます。
建設型の仮設住宅には、被災地の近隣にある適切な土地に、まとまった戸数を建設できるメリットがあります。被災者への支援や情報提供が効率的に行えるという意味では、存在意義の高い形態と言えます。
しかしその完成・入居までには1ヶ月以上の時間がかかり、準備費用も一戸につき500万円以上も必要。将来的に撤去する場合は、解体・廃棄に多くのコストが必要になることが容易に想像できます。
借り上げ型は、すでにある空き家などを活用し、被災者へ仮住まいとして提供する方法です。土地の選定や建築期間が大幅に短縮できるメリットがある一方で、被災者全員が入居できる物件数の確保は、事実上不可能。
また空き家を活用するため、被災者の仮住まいをある程度まとめる、ということも難しく、被災後の生活サポートに支障が出る可能性も高くなると言わざるを得ません。
コンテナを活用したレスキューホテルには、こうした仮設住宅問題の根本的な解決策の一つとして期待が寄せられています。
まずコンテナ自体が移送可能な形状となっているため、室内外の設備をあらかじめ整えた状態で、被災地まで運べます。そのため、現地でイチから建造する仮設住宅に比べて、必要な工期を短縮できるメリットがあります。
また、様々な役割を持たせたコンテナを組み合わせて増設することで、限られたスペースを有効に活用しつつ、多くの被災者に仮住まいを提供できます。
さらに撤去の際も、コンテナを基礎から外して移動させるだけなので、解体コストの削減にもつながります。
コンテナホテルの仮設住宅としての利用に注目が集まっています。仮設住宅としての役割を終えた後は、コンテナごと移動して店舗や事務所として臨機応変に再利用することが可能です。処分コストを押さえることで、コンテナホテルを有効活用できます。
コンテナを活用したレスキューホテルは、一般の仮設住宅と比較して安い費用で運営することが可能です。予算に応じて柔軟に建設できるだけでなく、その価格の安さから、仮設住宅としての導入を検討している自治体も徐々に増えています。
被災地における仮設住宅での生活は、これまでの生活環境から大きく変化することから、何らかのストレスを抱える方も出てきています。心身に異常を来たして情緒不安定になる子供も見られることから、自治体を始め周囲の方々が連携を取り何らかの対策を講じる必要があります。
これまで被災者の一時的な避難場所として、多くの仮設住宅が建設されて実際に利用されてきました。仮設住宅は一見利便性の高い住宅のように見えますが、実は多くの課題を抱えており、仮設住宅に避難している方々を悩ませているのです。
フェーズフリーとは、「日常時」と「非常時」といフェーズがフリー(無い)状態のこと。この条件を満たした商品やサービスには「フェーズフリー認証」と呼ばれる資格の一種が与えられます。 このページでは、「フェーズフリー認証」の概要や認証審査の基準、具体的な認証商品・サービスなどについて解説。また、2020年12月に宿泊事業として初めて「フェーズフリー認証」を得たレスキューホテルについても簡単にご紹介しています。
楽天の旅行予約サービス「楽天トラベル」では、全国の宿泊施設と連携し、レスキューホテルプロジェクトを開始しました。新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、軽症者の受け入れを支援するサービスを進めています。
全国の宿泊施設に受け入れの可否を確認し、東北では60軒の宿泊施設が受け入れ可能であることを確認。(4月24日時点)楽天トラベルが感染者と宿泊施設を引き合わせ、事態収束後の通常営業まで全面的に無償で支援する本プロジェクトは大きな注目を集めています。
出動エリアの箇所は以下を参考にしてみてください。
地域 | 出動都県 | 拠点数 | 室数 | 協定締結数 |
---|---|---|---|---|
国土交通省関東地方整備局 | 1 | |||
東北 | 山形 | 0 | 0 | 1 |
北関東 | 茨城 | 5(3) | 172(111) | 4 |
栃木
|
12 | 355 | 6 | |
群馬 | 3 | 102 | 7 | |
首都圏 | 埼玉 | 0 | 0 | 4 |
千葉 | 5 | 189 | 22 | |
東京 | 0 | 0 | 1 | |
神奈川 | 0 | 0 | 1 | |
中部・中京圏 | 愛知 | 2 | 56 | 2 |
近畿 |
滋賀
|
1(1) | 37(37) | 0 |
中国・四国※ |
岡山※
|
1(1) | 33(33) | 0 |
高知※ | 0 | 0 | 1 | |
九州※ | 熊本※ | 0 | 0 | 1 |
沖縄※ | 2(1) | 93(34) | 0 | |
14 | 31(6) | 1,037(215) | 51 |
引用元:レスキューホテル公式HP
※2021年4月現在。開業準備中の拠点数・室数(カッコ内)を含みます。
※九州地方・中国地方・四国地方への出動は2021年夏~秋以降となります。
平時は宿泊施設として稼働し、有事の際は医療拠点や行政拠点のすぐ近くで、医療従事者や被災者、患者の収容施設としての稼働が期待できるレスキューホテル。
ひとつ一つが独立したコンテナであるため、1棟につき1つの役割を持たせる運用が容易にできます。
感染症対策であれば、患者を収容する病室・臨時の診察室・外来専用の待合室に加え、従事者や職員の宿舎や事務所などの活用法が考えられます。
また、容易に設置できるため、スペースが許す限り、スピーディな増設が可能。さらに、内部構造はそのままに、他拠点への移設もフレキシブルにできます。
2019年11月に中国で発生し、2020年には世界的なパンデミックにまで発展した新型コロナウィルス。日本国内でも多くの感染者が確認され、緊急事態宣言が出される事態にまで発展しました。
事態が深刻化していた時期には、いくつかのホテルが国や自治体からの要請に対応し、比較的軽症の感染者を受け入れたことが報じられ、大きな話題となりました。
そんな中でコンテナを活用したレスキューホテルも、長崎に停泊したクルーズ船のコロナウィルス感染対策として、千葉県成田市と栃木県足利市から50室が有事出動を果たしています。
レスキューホテルは移設が容易にできるため、医療拠点や行政拠点に隣接した場所に設置が可能。今回の例でいえば三菱重工長崎造船所敷地内に設置されました。
空間開放性も高く、可能な限り「3密」を避けるように設置できるため、新型コロナウィルスに対応する医療拠点として、期待が高まっており、三鷹市や千代田区のPCR検査センターとしての出動が発表されています。
移動が容易なレスキューホテルだからこそ、医療拠点や行政拠点の駐車場などへ設置することも可能。新型コロナウィルス感染対策時や震災時などの非常時には、各種拠点の運用効率を最も高くするための拡充設備として、レスキューホテルは高いサポート能力を発揮します。
レスキューホテルの特徴の一つが、その開放的な空間。設計上、「3密」発生の可能性が低くなることから、新型コロナウィルス感染予防対策としては理想的な空間と言えます。それぞれの個室は独立しているため、一つの建物内に人が密集することで起こる、いわゆるクラスターの可能性を抑えることも期待できるでしょう。
レイアウトの自由度が高いため、コンテナを宿舎だけではなく病室として利用するなど、様々な用途の空間に変更することが可能。各シーンに対応する従事者の感染危険性を低減させることができるでそう。また、状況に応じた設備の増減も容易なことから、より必要性の高い他拠点へコンテナを移設して再利用することも可能です。
2021年3月末時点で、レスキューホテルは栃木、群馬、千葉、茨城、愛知、岡山、沖縄の計29拠点に962室を配備(準備中も含む)。2021年中には、北海道を除く46都道府県に出動が可能となるよう、運営会社のデベロップは急ピッチで計画を進めています。
新型コロナウィルスや大震災などの有事発生に備え、全国の多くの自治体等との連携が着実に広がっています。
レスキューホテルの利用コストは次の通りです。
利用日数 | 1日1室あたりのコスト |
---|---|
60日 | 18,000円 |
90日 | 14,000円 |
120日 | 12,000円 |
180日 | 10,000円 |
上記以外の利用日数におけるコストについては、運営会社のデベロップまで直接お問合せください。なおレスキューホテルの出動にあたっては、原則として協定を提携済みの自治体からの要請が必要となります。
災害など有事の際にレスキューホテルを迅速に緊急出動させる旨の「災害協定」が、日本全国の各自治体と株式会社デベロップとの間で締結されています。
近年の災害の特徴として豪雨災害が多く、家屋が一気に浸水してしまい被災を余儀なくされる家庭が増えている状況があります。
そのような中でレスキューホテルに対する注目が急速に集まっており、将来も起こりうる災害状況に対して柔軟に対応できる環境を用意しようと、自治体がコンテナホテルを有する株式会社デベロップと災害協定を締結しています。
2019年10月の台風19号により甚大な被害を被った茨城県神栖市では、市内各所で停電が発生したほか、冠水や倒木、農産物被害などが相次ぎました。今後も引き続き災害被害が発生する恐れがあることから、株式会社デベロップと災害協定が交わされています。
栃木県矢板市においても、2019年10月の台風19号により床上浸水や床下浸水、農作物などの甚大な被害を受けました。今後は避難先や被災先としてレスキューホテルの活用が期待されており、株式会社デベロップと災害協定が締結されました。
サテライト民泊として開発された「R9 Villadge」の客室は、全体的に落ち着いたシックなイメージづくりを行なっています。客室内はモノトーンで統一されており、落ち着いた空間で想い想いの時間を過ごすことができるでしょう。
画像引用元:デベロップ公式サイト
(https://www.dvlp.jp/lp/hotel/example.html)
風呂場とトイレが別になっているタイプの部屋の内装です。長期間滞在する方にとってトイレは重要な空間です。清潔感とシンプルモダンな雰囲気を兼ね備えた、機能的な設備が搭載されています。
画像引用元:デベロップ公式サイト
(https://www.dvlp.jp/lp/hotel/example.html)
「Casual Resort COFF Ichinomiya」のお風呂は、露天風呂スタイル。プライバシーに配慮しながらも、空が眺められる仕様となっています。一人旅でゆったりとくつろぐのにもぴったりです。個室内にお風呂があるタイプもあります。
画像引用元:デベロップ公式サイト
(https://www.dvlp.jp/lp/hotel/example.html)