公開日: |更新日:
ホテル投資では、物件を取得して終わりではなく、開業後も人件費や光熱費などのコストが継続的に発生します。ランニングコストの内訳を把握できているかどうかが、収支計画の精度を左右するといえるでしょう。当ページでは費用の内訳と抑え方を解説します。
ホテル運営で最も大きな比重を占めやすいのが人件費です。フロント業務、客室清掃、リネン管理、予約対応などに人手が必要で、給与のほか法定福利費や外部委託費も含まれます。ビジネスホテルでは売上に対して20〜28%程度が目安とされ、シティホテルや旅館ではさらに比率が上がる傾向です。稼働率が落ちても大きくは減らせない固定的な費用である点に注意しましょう。
客室の空調、給湯、照明、共用部の設備稼働などにかかる電気・ガス・水道の費用です。売上に対する比率はビジネスホテルで5〜8%程度、大浴場や料飲部門を持つ施設では7〜12%程度まで上がる場合があります。エネルギー価格の変動を受けやすい一方、LED化や人感センサー、高効率空調の導入など設備面の対策が効きやすい費目でもあります。
客室設備の故障対応、内装・什器の更新、外壁や屋根の補修、消防設備の点検などにかかる費用です。設備関連費として売上の3〜6%程度が目安ですが、毎年均等に発生するわけではなく、数年おきに大きな支出が生じます。ホテルは住宅より消耗が早く、客室の清潔感を保つ投資は口コミ・予約率に直結するため、長期修繕計画を立てて積み立てる考え方が有効です。
宿泊予約サイト(OTA)に支払う手数料や、旅行代理店手数料、Web広告費、予約システムの利用料などが該当します。OTA手数料はビジネスホテルで売上の8〜15%程度が目安とされ、OTAに依存するほど比率は高まります。直接予約を増やせば負担を下げられる可能性はありますが、直販を伸ばすには広告や会員施策のコストも発生するため、総額での比較が必要です。
ランニングコストの総額は施設規模で変わりますが、投資家として重要なのは「そのコストを誰が負担するのか」です。負担範囲は運営形態によって次のように変わります。
| 運営形態 | オーナーの負担範囲 | 収益の受け取り方 |
|---|---|---|
| 自主運営(所有直営) | 人件費・光熱費・修繕費など運営費のほぼ全額 | 運営利益がそのまま残る(変動もそのまま受ける) |
| 運営委託(MC方式) | 運営費は原則オーナー負担+運営委託料 | 運営費と委託料を差し引いた利益 |
| リース(賃貸借)方式 | 建物の所有者としての費用が中心 | 契約に基づく賃料を安定的に受け取れる |
自主運営はコストを全額負担する代わりに収益の変動もそのまま受け、運営委託では売上の5〜15%程度の委託料が継続して発生します。リース方式であれば運営コストの多くを運営会社が負担するため、賃料収入が中心となり収支が読みやすくなるのが特徴です。契約期間や賃料の改定条件はあらかじめ確認しておきましょう。
近年の宿泊業では、人手不足を背景に人件費が上昇し、その分が宿泊単価(ADR)へ転嫁される動きが続いています。宿泊・飲食業では回答企業の約7割が人手不足を感じているとされ、宿泊業の離職率は26.6%と全産業平均15.4%の約1.7倍。有給休暇の取得日数も5.9日と全産業平均11.0日の半分程度にとどまります。
こうした環境下でADRは上昇し、2025年通年で前年比7.2%増、2026年1〜4月は前年同月比13.1%増と報告されています。一方で客室稼働率は伸び悩み、都市型ホテルでは75%前後が実務上の上限に近いとの指摘も。つまり稼働を伸ばして増収を図るのではなく、人件費をどう抑えながら単価を維持するかが経営の重要テーマになりつつあります。
セルフチェックイン端末や自動精算機、スマートロック、清掃管理システムなどの導入により、フロント業務や管理業務にかかる人手を減らす方法です。24時間有人体制を前提としない運営に切り替えられれば、夜間人件費の圧縮につながる可能性があります。導入費用と削減できる人件費を比較し、回収期間を試算したうえで判断することが大切です。
もう一つの視点が、建物の構造そのものからコストを抑える方法です。コンテナホテルは客室が1室ごとに独立しており、共用廊下やロビーを最小限にできるため、省人化オペレーションと相性がよい構造といえます。客室単位で入れ替えや修繕ができるため、館内全体を止めずに対応しやすい点も特徴です。
また、需要の変化に合わせた客室の増減や移設ができる柔軟性があり、将来的な転用・撤去にかかる負担も抑えやすい構造です。建築コストの面でも一般的なホテル建築より抑えられるとされ、初期投資と運営コストの両面から検討できる選択肢といえます。実際の収支は立地や計画内容によって変わるため、まずは事業者に試算を依頼してみましょう。
ホテル投資では、表面的な利回りだけでなく、人件費・光熱費・修繕費・OTA手数料といったランニングコストと、その負担範囲を確認することが欠かせません。コスト構造を理解したうえで運営形態と建物の選択を検討しましょう。