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資材価格や労務費の上昇により、ホテル建築費の高騰が続いています。開発の採算悪化や新規供給の減少にもつながっているのが実情です。建築費高騰の現状と投資への影響、対策となる工法を順に整理します。
建設物価調査会の建築費指数(2015年=100)によると、東京の集合住宅RC造は2026年8月に146.7となり、前年同月比で5.3%上昇しました。2015年と比べると約1.5倍の水準で、工事費は右肩上がりのまま高止まりしています。
事務所S造も前年同月比で5.5%上昇と、用途を問わず同様の傾向です。ホテル開発も例外ではありません。
主な要因は次の4つです。
ホテルの収益は立地や稼働率、平均客室単価でおおよそ決まります。建築費だけが上がれば、同じ条件でも初期投資が膨らみ、利回りは下がります。
象徴的なのが、JR九州の「博多駅空中都市プロジェクト」です。ホテルやオフィスなどの複合ビル計画でしたが、事業費が当初想定の435億円から約870億円と約2倍に膨らみ、2025年9月26日に中止が発表されました。
国土交通省の建築着工統計では、宿泊業,飲食サービス業用の着工床面積は2025年に約254万㎡と、前年比5.8%減少しています。JLLも、日本の新規供給率は1.7%とアジア太平洋で低く、建設費高騰により今後数年で大幅に増えるのは考えづらいと指摘。供給が絞られれば、既存ホテルにはRevPAR(販売可能客室1室あたり売上)の上昇圧力がかかりやすくなります。
建築費の先行きを正確に予測することは難しいものの、公表されているデータからは、当面は下がりにくい状況が続くと考えられます。労務費と資材価格のそれぞれについて、動きを見ていきましょう。
国土交通省は、2026年3月から適用する公共工事設計労務単価を、全国全職種の単純平均で前年度比4.5%引き上げました。引き上げは14年連続で、全国全職種の加重平均は25,834円と、初めて25,000円を超えています。
さらに、2025年12月12日には改正建設業法が完全施行されました。適正な労務費を確保するため、著しく低い請負代金や著しく短い工期での契約が禁止されています。技能者の処遇改善を後押しする制度が整ったことで、労務費は今後も上がりやすい状況です。
日建連によると、建設資材物価は2021年6月からの5年間で39%上昇し、直近2年間(2024年6月比)でも9%上がっています。上昇のペースは以前より緩やかになったものの、下落には転じていません。
建築費指数も前年同月比で5%前後の上昇が続いており、「いずれ下がるはず」と着工を先送りしても、コストが改善するとは限りません。高止まりを前提に事業計画を立て、工法や設計の工夫でコストを吸収する視点が欠かせないでしょう。
建築費高騰への対策は、工法と設計の段階で考えておくのが効果的です。国土交通省の建築着工統計(2025年)から、構造別に1坪あたりの工事費予定額を算出すると以下のとおりです。
| 構造 | 1坪あたり工事費予定額 |
|---|---|
| SRC造 | 約158.5万円 |
| RC造 | 約135.5万円 |
| S造 | 約122.8万円 |
| 木造 | 約76.9万円 |
※住宅を含む全建築物の平均。工事費予定額÷着工床面積で算出
構造の選び方で坪単価には大きな差が出ます。工期の短縮も重要で、短いほど建設中の借入金利や人件費を抑えられ、開業も早まります。
近年注目されているのが、客室ユニットを工場で生産し、現地で組み立てる「モジュール工法」です。現場での作業を減らせるため、天候や職人不足の影響を受けにくく、工期を短縮しやすいのが特長です。
工期が縮まれば建設中の金利や現場の人件費も圧縮でき、総事業費の抑制にもつながりやすくなります。
建築費が高止まりしている今は、従来工法での新築だけを前提にせず、工期を抑えやすい工法の比較や、既存ホテルの取得、オフィス・寮などからの用途転換まで視野に入れて検討しましょう。
大切なのは、立地や想定稼働率・ADRに対して建設費が見合うのかを、計画の早い段階で試算することです。金利や工期の変動も織り込み、複数のシナリオで比べておくと安心です。